新たな年を迎えて

 

佐賀県立点字図書館
館長  野口 幸男

 

 

利用者及びボランティア、ならびに点字図書館を支えていただいております皆さまに、心から新年のお慶びを申し上げます。
 旧年中に賜りましたご支援ご協力に対しまして厚く御礼申し上げますとともに、本年も何卒よろしくお願い申し上げます。
今年の干支はサルですが、「申」という漢字は、十二支の九番目、その意味は「伸ばす」で、「草木が十分に伸びきった時期で、実が成熟して香りと味がそなわり固く殻に覆われて行く時期」といわれています。「病が去る。病に勝る」の「サル」で、無病息災の年となるように切に願いたいものです。
干支にちなんで、「十二支考」という本で「猴に関する民俗と伝説」という章を読んでみました。サルについて古今東西の書物に記されたことが、「エーとそれアノ何じゃ、それからまた、アジア諸国を巡った露人ニキチンの紀行に…」などと、話しかけるような文体で延々と綴られていました。ひとつのことについて、古今の歴史を辿り、様々な国や地域の違いを調べて著述された情熱に、ただただ驚嘆するばかりでした。「十二支考」の著者南方熊楠は民俗学や粘菌学の研究者で、夏目漱石や正岡子規等と一緒に東京大学予備門に入った後に欧米に留学し、帰国後は郷里の和歌山に戻って植物や民俗の研究に専念したとされています。来年は生誕百五十年を迎える、博覧強記の人とも知の巨人とも呼ばれている人です。「十二支考」ですが、点訳図書は上下で全17巻、カセットテープでは全26巻、デイジー版も製作されています。
冬も読書には最適の季節です。少しボリュームのある本、これまでと趣きの異なる本等など、試してみられてはいかがでしょうか。
1月31日の日曜日、恒例の「利用者とボランティアとの懇談会及び読書会」を予定しております。利用者の皆さまとお会いしてお話を伺ったり、読書会で著者による「よもやま話」を楽しんだり出来ますことを心待ちにしております。
 本年も、点字図書館職員一同、視覚障がい者情報提供施設としての原点をふまえつつ、皆さまの読書生活を豊かで意義あるものにすべく業務に励んでまいりたいと存じております。皆様のご意見ご要望をよろしくお願いいたします。


                                

 

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