令和の秋

 

佐賀県立点字図書館
館長  野口 幸男

 

 

  点字図書館駐車場の南側のイチョウの葉が色づき始め、さわやかな風が吹きわたっています。点字図書館利用者及びボランティア、ならびに点字図書館を支えていただいております皆さまには、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
8月28日の早朝、叩きつけるような雨音に起こされました。1時間に100ミリを超える雨が降り、佐賀県内に大雨特別警報が出されました。冠水した道路を水しぶきを上げて走る車の映像が、朝のテレビニュースで流れました。当日は臨時休館し、翌29日に出勤してみると館内には床上5センチほどの浸水の跡が残っていました。29日と30日の2日間、その後片付けに追われることになりました。点字図書館が開館してから約半世紀、本当に五十年に一度の豪雨災害でした。今回の豪雨災害によって、県内では人的被害を含め広範囲かつ深刻な被害が出ました。謹んでお見舞いを申し上げるとともに、1日も早い復旧をお祈りいたします。
 豪雨や暴風、さらには地震や津波などの自然の脅威を目の当たりにすると、自然の前に人間がいかに無力であるかを思い知らされます。こんな時、数十億年の地球の歴史や約10万年のヒトの歴史には、色んな出来事があったんだろうなと、歴史のかなたに目が向いてしまいます。絶滅した生き物たちが、自ら絶滅理由を語る『わけあって絶滅しました。』 (ダイヤモンド社)という本があります。地球温暖化によってシベリアの永久凍土が解け始め、氷河期に埋もれていたマンモスが掘り出されました。その体から取り出した細胞でマンモスの復活が出来るのではないかという夢を見たりもします。「恐竜の子孫こそ鳥なのだ」という鳥類学者が恐竜の生態を復元する、『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』(新潮文庫)という本もお勧めの一冊です。
 10月下旬から「第73回読書週間」です。「おかえり 栞の場所で待ってるよ」、ほっこりするような今年の標語です。灯火親しむの候、古典に挑戦すべく、「源氏物語」54帖を与謝野晶子による現代語訳で1日1帖のペースで読み始めています。「帚木」の巻では、帚木蓬生という小説家の作品を思い出したり、「雨夜の品定め」の段に平安時代の女性観を考えさせられたりしています。
 9月には、点字図書館改築工事に伴う引っ越しのため、1ヶ月間休館させていただきました。利用者の皆さまにはご迷惑とご不便をおかけして申し訳なく存じております。10月末の時点で、荷造りは終了しておりますが、旧総合保健会館の改修の都合で引っ越しは11月中旬以降になる予定です。
 令和の秋も、深まっていきます。皆さま方のご自愛を祈念申し上げます。

(追記)この原稿を書き終えた後の10月中旬、猛烈な台風が伊豆半島に上陸し甲信、北関東、そして東北の各地に甚大な被害をもたらしました。このたびの台風19号により、亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。また、被災された皆さまに心からお見舞い申し上げます。

 



 


                                

 

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