さわやかな秋に向けて

 

佐賀県立点字図書館
館長  野口 幸男

 

 

 8月7日は立秋、暦の上では秋を迎えます。残暑厳しき折、利用者及びボランティア、ならびに点字図書館を支えていただいております皆さまには、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
 4月から5月にかけての緊急事態宣言及びその解除後、ぎこちない形で日常が戻ってきているような気がします。点字図書館においても、点訳ボランティアの週2回の対面校正や音訳ボランティアの勉強会などが、7月以降再開されて今日に至っています。
 本原稿を作成している7月上旬、人吉市や球磨村などの熊本県南部、佐賀、福岡、大分の九州各地をはじめ、日本列島いたるところで豪雨災害が頻発し甚大な被害が伝えられています。「令和2年7月豪雨」による災害で尊い命を奪われたた方々のご冥福をお祈り申し上げるとともに、被災された皆さまに心からお見舞い申し上げます。本年は、図書館通信を通して「防災情報」をお伝えしていこうとしていた矢先に、大変な災害に直面することとなりました。本号には、佐賀新聞に連載された「10市10町 うちの防災マップ」を転載しています。お住まいになっている地域のことや浸水被害や土砂災害の予測や避難などについて関心を持っていただき、災害に備えていただきたいと願っています。 また、動画投稿サイト「ユーチューブ」の佐賀県公式チャンネルには、「災害に備えを」というアニメーションも公開されています。「日頃の備え」について考えるきっかけにしていただければ幸いです。
 点字図書館は、ボランティアによって製作していただいた点訳・音訳図書のデータを、視覚障害者情報総合システム「サピエ」にアップデートし、それらはサピエ加盟の点字図書館や公共図書館及びその利用者の大切な共有財産となっています。綿密に調査を行った上で点訳・音訳され、その後、複数の校正者による校正を経て図書の完成に至ります。6月の中頃、デイジー図書について利用者から気になる箇所があるとの電話がありました。担当者が調べてみると、漢字熟語が二通り重複して録音されていました。音訳された音訳ボランティアに連絡してみると、すぐにその箇所が判明して修正してもらえることになりました。時を置かずして、サピエの「お知らせ」欄に、「下記のデイジー図書のデータに不備がありましたので、修正し差し換えました。」のメッセージが掲載されデータが差し換えられました。読みの重複を聞き分けられた利用者の耳の鋭さ、修正すべき箇所を即座に突き止められた音訳者のち密な読みの姿勢、改めて聞き手と読み手との間の緊張関係を教えられる機会となりました。
 新型コロナウイルス感染症に揺れた春から自然災害の夏へ、季節は移ろってきました。最近、パオロ・ジョルダーノ著「コロナの時代の僕ら」(早川書房)という本を手にしました。著者は、トリノ大学で物理学を学んだイタリアの若い作家。イタリアで新型コロナウイルスの感染者が出始めた本年2月末から3月まで、現地の新聞に寄稿されたものがまとめられています。大量の情報があふれるように流れている時代、少し立ち止まって深呼吸をするみたいに読んでみました。「コロナの時代」に思ったことや考えたことを忘れないようにしよう、そんな思いを強くしました。
 暑さの中にも朝夕に少し秋が見え始める季節、くれぐれもご自愛くださいますようお願いいたします。

 

 


                                

 

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