春の日差しの中で

 

佐賀県立点字図書館
館長  野口 幸男

 

 

 令和3年度の幕が上がりました。点字図書館利用者及びボランティア、ならびに点字図書館を支えていただいております皆さまには、新たな年度も相変わりませずよろしくお願いいたします。
 3月中旬、点字図書館の跡地では、新築工事の杭打ち作業が始まりました。2月下旬、県障害福祉課より新たな建物の50分の1の模型が届きましたので、玄関ホールに展示しています。点字図書館にお越しの折は、手と指で建物の構造や間取り等をお確かめになってください。
 令和元年12月中旬に旧佐賀県総合保健会館に移転してから1年4カ月が経とうとしています。本年11月末には新たな建物の完成が予定されています。移転先での業務及びコロナ禍による活動の制限などにより、利用者及びボランティアなど関係者の方々には、多々ご迷惑をおかけしておりますが、もうしばらくのご辛抱をお願い致します。
最近、佐賀駅から点字図書館に向かう道すがら、ウグイスの鳴き声が聞こえてきました。利用者からウグイスの「笹鳴き」が聞こえてくるとのメールもいただきました。「図書館通信」2月号で、福岡市の田中良介様から寄贈された「鳥好き良ちゃんの声の野鳥だより」のことに触れましたが、耳を澄まして目を閉じて鳥たちの声を聞こうとしています。「ツーピ、ツーピ」と鳴いているのはシジュウカラ、ヒバリは「ピーチク、ピーチク」だけど、空に舞い上がる時と降りてくる時とは鳴き声が違っているらしい。人懐っこく近づいてきて、「ヒッ、ヒッ、ヒッ」と鳴くのはジョウビタキ。春の日差しの中、鳥たちの声は喜びにあふれているように思えました。
 この原稿を書いているのは、新型コロナウイルスの感染症拡大の第三波からウイルス変異株の増加が報じられている中なのですが、その影響が社会的に弱い立場にある人たちの上に重くのしかかっているように思えてなりません。自宅近くの道路沿いの植え込みのごみ拾いをしていて、お酒のカップが最近増えてるのに気づきました。どんな人が路上で酒を飲み干しているのだろうか、とても気にかかりました。遠藤平蔵という名前の猫(漫画「夜廻り猫」深谷かほる著)ならば、「もし、そこな若者。おまいさん、なぜ泣いておる」って声をかけるのでしょうか。
東日本大震災から今年で10年。先日、「共同通信」が全国の障害者を対象にしたアンケート調査の結果が報じられていました。80%の人が、災害時の国、自治体の支援が「不十分」「どちらかといえば不十分」と感じ、その理由として避難所で十分な配慮を受けられないことや情報不足が挙げられていました。また、52%の人が、障害者や高齢者向けの福祉避難所を「利用しようと思わない」と回答され、自分が住む地域の福祉避難所の場所を知らない人も60%に上っていました。災害に備えてとっている対策には、「避難所の確認」、「避難行動要支援者名簿の登録」、「障害に関する物資、機材の備蓄」が挙げられていました。「災害は、普段から地域にあるバリアーを顕在させる」と、専門家からの指摘もなされています。今年度も、点字図書館では、災害に備える情報を皆さんにお伝えしていけたらと考えています。
 新型コロナウイルス感染症は、まだまだ終息の気配が見えない中、ワクチンの接種が始まっています。感染症の拡大防止に注意を払いながら、一刻も早い日常生活の復活をと願うばかりです。

 

 


                                

 

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