おすすめの本

平成28年12月9日で没後100年、2017年で生誕150年の夏目漱石(1867〜1916)を紹介したいと思います。本名は夏目金之助。漱石が生まれた年は、大政奉還という、まさに時代が変わろうとする混乱の中に生まれ、明治を代表する文豪として今現在に至るまで多くの読者を惹きつけています。また、正岡子規、高浜虚子、寺田寅彦など文人学者と交流を持っていました。しかし、生涯健康には恵まれず、神経性の胃病に生涯悩まされ、1910年に療養先の修善寺で大量の吐血をし、危篤状態に陥りますがその後生還、そして1916年、執筆途上の「明暗」を残し死去しました。数多くの作品を残しましたが、その中で前期3部作(「三四郎」「それから」「門」)・後期3部作(「彼岸過迄」「行人」「こころ」)といわれる6作品を紹介したいと思います。以下の図書はサピエ図書館にも所蔵しておりますので、貸出希望の方は図書館までご連絡ください。

.三四郎

熊本の高等学校を卒業して、東京の大学に入学した小川三四郎は、見る物聞く物の総てが目新しい世界の中で、自由気儘な都会の女性里見美禰子(みねこ)に出会い、彼女に強く惹かれてゆく…。青春の一時期において誰もが経験する、学問、友情、恋愛への不安や戸惑いを、三四郎の恋愛から失恋に至る過程の中に描いて『それから』『門』に続く三部作の序曲をなす作品である。

.それから

長井代助(だいすけ)は三十にもなって定職も持たず、父からの援助で毎日をぶらぶらと暮している。実生活に根を持たない思索家の代助は、かつて愛しながらも義侠心から友人平岡に譲った平岡の妻三千代との再会により、妙な運命に巻き込まれていく…。破局を予想しながらもそれにむかわなければいられない愛を通して明治知識人の悲劇を描く、『三四郎』に続く三部作の第二作。

.

親友の安井を裏切り、その妻であった御米(およね)と結ばれた宗助は、その負い目から、父の遺産相続を叔父の意にまかせ、今また、叔父の死により、弟・小六(ころく)の学費を打ち切られても積極的解決に乗り出すこともなく、社会の罪人として諦めのなかに暮らしている。そんな彼が、思いがけず耳にした安井の消息に心を乱し、救いを求めて禅寺の門をくぐるのだが。『三四郎』『それから』に続く三部作。

.彼岸過迄

誠実だが行動力のない内向的性格の須永(すなが)と、純粋な感情を持ち恐れるところなく行動する彼の従妹の千代子。愛しながらも彼女を恐れている須永と、彼の煮えきらなさにいらだち、時には嘲笑しながらも心の底では惹かれている千代子との恋愛問題を主軸に、自意識をもてあます内向的な近代知識人の苦悩を描く。須永に自分自身を重ねた漱石の自己との血みどろの闘いはこれから始まる。

.行人

女性というものに哲学的な懐疑をもつ一郎は、弟に対する妻の愛情を疑うあまり、弟に自分の妻と一晩他所(よそ)で泊ってくれと頼む。知に煩わされて、人を信ずる事の出来ない主人公の、苦悩と悲哀と、寂莫と、それにさいなまれる運命的生活が描かれる。漱石の実人生と作品との交渉が問題にされる作品。

.こころ

恋人を得るために親友を裏切り、自殺へと追いこんだ。その過去の罪悪感に苦しみ、自らもまた死を選ぶ「先生」…。愛と偽善、誠実の意味を追究した傑作。

 

 

※前号で2015年度の本屋大賞ノミネート作品を紹介しておりましたが、順位が決定しましたのでご紹介しておきます。

順位

 書名

著者名

大賞

羊と鋼の森

宮下 奈都

2位

君の膵臓をたべたい

住野 よる

3位

世界の果てのこどもたち

中脇 初枝

4位

永い言い訳

西川 美和

5位

朝が来る

辻村 深月

6位

王とサーカス

米澤 穂信

7位

戦場のコックたち

深緑 野分

8位

東山 彰良

9位

教団X

中村 文則

10位

火花

又吉 直樹 

 

 

 

←もどる