センター通信
ごあいさつ
薫る風
佐賀県立点字図書館
館長 田中 真理
点字図書館利用者及びボランティア、ならびに点字図書館を支えていただいております皆さまには、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
10月までは「いつまで半袖で過ごすんだろう」などと思っていましたが、あっという間に朝晩涼しくなり、日が落ちるのが早くなり、ここ数週間で一気に秋らしくなりました。
この原稿を書いている今は11月なのですが、現在金木犀が花盛りを迎えています。秋になると必ずどこかから漂ってくる甘い香りに、心当たりのある方も多いのではないでしょうか。オレンジ色の小さな花が密集して咲いている様子が可愛らしく、駅や公園などの緑地では見上げるような大木となっているものもあります。大学時代の最寄り駅には、5メートルはあろうかという大きな金木犀が植わっていて、一際存在感を放っていました。また、自宅の隣には生垣がわりに金木犀が何本も植えてあり、香りを放つので、我が家の玄関はこの時期ずっと金木犀の香りに包まれています。借景ならぬ、借香というやつでしょうか。そんな言葉があるのか?と思い調べてみたところ、仏教用語が出てきました。この場合の借香とは、「お葬式や法事などの法要の際、すでに会場に備えられた抹香や線香を利用すること」だそうです。これは当然ではなく、「本来、抹香や線香は供えるために自分で用意するもの」で、これを「自香」と呼ぶそうです。またひとつ知らないことを知りました。それとは別に、インターネットで「借香」と検索すると、「隣の家の金木犀の香りを楽しんでいる」というブログや書き込みがいくつも出てきます。この時期、誰もが感じることのようでした。
ちなみに、「借香」に「よその家から漂ってくる香りを楽しむ」という意味はありませんので、悪しからず。
ひんやりした空気の中に金木犀の香りを感じると、秋だという実感が湧いてきます。以前の点字図書館の玄関脇にも、金木犀の木がありました。背丈は2メートルくらいでそれほど大きな樹ではありませんでしたが、秋になると花と香りで職員や来館者の皆様を楽しませてくれていたことを思い出します。残念ながらこの木は建て替えによって切られてしまいましたが、新しい点字図書館にも、どのような花木が花を咲かせるのか、楽しみにしたいと思います。
先日、確認を兼ねてということで、新しい点字図書館の内部を見学させてもらいました。窓があり、照明が付き、扉をくぐって中を歩くと、あの更地が、骨組みしかなかった所が、建物になり、今その床を歩いているのか!と何とも不思議な気分になりました。まだ所々の内装などは途中でしたが、着実に完成に近づいているようです。これから建具や備品の搬入、引っ越しと続きますが、事故やトラブルなどが無いよう、また業務に支障が出ないよう努めたいと思います。
これから、季節が徐々に「冷たい」から「寒い」に変わっていきますが、引き続き新型コロナウイルス、またインフルエンザ等、皆様も体調にはお気を付けください。