センター通信
ごあいさつ
夢の跡
佐賀県立 視覚障害者情報・交流センター
センター長 田中 真理
「あい さが」利用者及びボランティア、ならびに「あい さが」を支えていただいております皆さまには、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
前回のごあいさつでは、朝晩は涼しいが日中はまだ暑い、と書いたような覚えがありますが、流石に近ごろは涼しいというより寒いといった方がいいような季節になって参りました。コロナやインフルエンザなどもあり、体調には気を配りたい時期でもあります。
さて、博物館好きとして、普段からグーグルマップなどを眺めては近隣の博物館、資料館にどうやったら日帰りで行けるかなどと考えているのですが、この度そのうちの二ヶ所に行ってまいりました。福岡県八女郡広川町にある広川町古墳公園資料館(こふんピア広川)と、八女市の岩戸山歴史文化交流館・いわいの郷です。広川町と八女市は隣り合っているので、一日で回ることができました。
このあたりには古墳が多くあり、八女古墳群として国指定遺跡に登録されています。そのうち石人山古墳と弘化谷古墳を中心に公園として整備し、出土品などを展示する資料館として設置されたのがこふんピア広川です。
私も資料館で説明を読むまで知らなかったのですが、九州北部の古墳は本州とは文化的な違いがあり、特に特徴的なのが石人石馬だそうです。石人石馬とは、その名の通り人や動物、器財をかたどった石の彫刻で、埴輪と同じく被葬者を守るために墳丘に並べられたそうです。八女古墳群には特に石人石馬の出土が多く、石人山古墳の武装石人は古墳の名前の由来にもなっている国の重要文化財だそう。なるほど。全部資料館の説明の受け売りですけども。
資料館そのものは町立ということで、それほど大きくはありません。コンパクトなので展示室まですぐですし、ジオラマや現物をゆっくり見ることができます。前述の石人や石室のレプリカがメインですが、甕棺や須恵器、鏡などの副葬品もあります。
古墳を整備した公園なので、資料館の裏手を上って古墳(というか裏山自体が古墳なのですが)の石室をのぞくことができる、と教えていただきました。職員の方に懐中電灯と、虫が多いので、ということで虫よけスプレーまで貸してもらい、いざ出発。
スニーカーで来てて良かったなどと思いつつ上っていきます。そんなに険しい道ではありませんが、上るにつれて草木が茂り、虫よけスプレーはやはり必須。そして上り始めよりちょっと薄暗くなってきたな、と思った頃に、石室を守るように置かれた石人と対面します。さすがに展示室のレプリカとは迫力が違う。そして後ろの石室は、鍵がかけられており、格子の隙間から懐中電灯で中を照らして見るような形です。薄暗い石室の、その迫力たるや、ちょっと後ずさりしてしまったほどでした。ホンモノはやっぱり違います。
資料館に戻って受付に懐中電灯を返すのですが、そこでダムカードならぬ古墳カードというものをいただきました。たぶん本来もらえるのは一種類なのですが、他に来館者がいなかったからなのか、石室まで見に行ったからなのか、なんと三種類いただきました。もらっちゃうと他に何があるのか気になってきます。これ、集めるやつかな……。
少し離れた弘化谷古墳をチェックしたあとは、八女に行きます。九州北部最大と言われる岩戸山古墳の敷地内に、岩戸山歴史文化交流館があります。交流館と名がついていますが、資料館でもあります。この古墳からは大量の石人石馬が出土しており、それらがずらりと並んだ展示室は圧巻の一言でした。さすがに触ることはできませんが、色々な形状のものを色々な角度からじっくり眺めることができます。成人と同じ高さの石をどのように加工したのか、そもそもどうやって切り出して墳丘まで運んだのかなど、謎と疑問は尽きません。
さて、この岩戸山古墳は大きさや築造年代から、筑紫君磐井の墓と推定されているそうです。古代史に詳しい方はピンときたかもしれません。そう、「磐井の乱」の磐井です。私も教科書通りの「5世紀、九州の磐井という豪族が朝廷に対して反乱を起こした」という知識しかなかったのですが、実際は色々な見方が出てきているそうで、磐井の乱についても、反乱とみなすか否か等、諸説あるようです。
そのあたりを織り込んだアニメーション映像が館内で放映されており、知らなかったこともありつい2回ほど見てしまいました。もちろん、磐井の墓の上の資料館なわけですから、磐井に同情的な内容になっているとは思いますが、「反乱を起こした」という一文だけでは知りえないことを知ることができて、とても勉強になりました。石人石馬という言葉も覚えましたし。
どちらも来館者がそんなに…というか、ほぼいなかったのですが、とても見ごたえがありましたし、何といっても無料! 何時間居ても、展示室を何周しても無料! 無料なのは、地方の(小さい)施設のとても良い所だと思います。あとは触ってもいいレプリカ石人とかがあったら最高でした。
九州の古墳については、熊本の山鹿なんかも有名ですので、機会があればそちらにも行ってみたいですね。山鹿といえば、また別の話題もあるのですが、そちらは次の機会にでも。
早いもので、今年も残り一ヶ月となりました。今年は「通常開催」「四年ぶり」「コロナ前と同水準」のような言葉を多く聞いたような気がします。とはいえ、何だかんだマスクを着け続けているように、巻き戻るのではなく、変化もありつつの日常といった印象でした。
これから年末、そして新しい年を迎えますが、どうか利用者の皆様にとって良い年になりますよう、お祈り申し上げます。
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